「沈黙の中で待ち望む 」 

説教題:「沈黙の中で待ち望む 」
聖書:ルカによる福音書 第1章5~22節
説教:吉村 光 修養生
賛美:「牧人ひつじ」「荒野の果てに」

「沈黙の中で待ち望む」

 クリスマスを待つ私たちは今喜んでいるでしょうか。それとも、今抱えている問題
を心配しているでしょうか。世間が華やかなこの時期だからこそ、心配事は心により
暗い影を落としているかもしれません。ザカリアとエリサベトは神さまの前に正しい
人でした。しかし、神の前に正しい2人には、子どもがいないという心の陰の部分が
ありました。夫婦で共に歩んできた彼らでしたが、それでも心には子どものことが
引っかかっていたのではないでしょうか。年を重ねて、今さら悩みとして人には打ち
明けられない。私たちにも、もう当然諦めるしかないという問題が今心のしこりと
なっているかもしれません。

 そのような、心のどこかに陰を持った者に、神さまは人の思いや考えを超えて働か
れます。神さまは、救い主を証しするヨハネを、ザカリアとエリサベトの間に与えま
した。それは、救い主の誕生というイスラエル全体の祈りが聞かれたことであり、ま
た、ザカリアとエリサベトの心の奥底にしまい込んでいた、子どもを与えてください
という祈りも同時に聞かれたことでもありました。

 ザカリアにとって、この知らせはあまりにも信じられないことでした。ザカリアは
祭司でした。神殿に入り香をたくという祭司の務めはくじによって決められました。
そのくじにザカリアが当たったのです。それは約2万人の祭司の中から当たるもので
あり、一生に一度あるかないかという機会でした。その重大な務めの中でさらに信じ
られないことが起こりました。天使が彼の目の前に現れたのです。天使を見たザカリ
アはうろたえ、恐怖に襲われました。そして、天使によって知らされた言葉はその日
一番の驚きでした。年老いた自分たちに子どもが与えられ、しかもその子は救い主が
来る準備をする人となると告げられたからです。ザカリアが、天使に聞き返したのは
当然のことでした。

 ザカリアは、天使に聞き返したことで口がきけなくなりました。しかし、この話す
ことができない「沈黙」こそ彼に与えられたしるしでした。ザカリアが口を閉ざされ
たということは、ザカリアが神さまの言葉の前で立ち止まり、これは一体どういうこ
とか考える機会を与えたのです。もし、ザカリアが話すことができたら、彼は途端に
周りの人に相談したかもしれません。しかし、ザカリアに必要だったのは、ただ、神
さまから語られた言葉に集中することでした。ザカリアは少なくとも丸々9ヶ月の
間、話すことができなくなりました。その間、彼は主の使いが自分に知らせたみこと
ばを何回も繰り返したことでしょう。

 クリスマスは救い主イエスさまがお生まれになった日です。その誕生を前にしてヨ
ハネが与えられました。ヨハネは「主は恵み深い」という意味です。クリスマスに向
かって、私たちに「主は恵み深い」という言葉が深く語られる時、私たちの心は整え
られます。沈黙の中でザカリアとエリサベトは、主の使いから語られた神さまの言葉
を噛み締めながら、自らの心を覆う暗い陰が取り去られて、心が晴れていくことを感
じたでしょう。なんと主は恵み深いのだろうか。彼らは主の恵み深さを味わい知った
のです。主の前に正しく歩む者を、主は決して忘れておられません。主は私たちをも
忘れておられません。主は私たちにもヨハネすなわち「主の恵み深さ」を与えてくだ
さり、真の救い主の訪れに備えさせてくださいます。私たちは、クリスマスを前に、
主の御前で、主の恵み深さを何度も味わい救い主の誕生を待ち望みたいと思うので
す。

東京聖書学院教会

◆送迎バスの東村山駅の出発時間は10時10分です。

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